転職先に大学職員を候補に挙げています。
でも、仕事内容が曖昧なまま応募しても面接とか上手くいく気がしません。
具体的な仕事内容を教えてください。
そんな質問にお答えします!
この記事では、大学職員の主力部署、
- 総務部
- 人事部
- 経理部
の仕事内容を詳しくお届けします。
ポイントは、転職活動や面接に直結するように理解を深めること。
そこを踏まえて、転職活動に役立つような視点で解説しています。
皆さんもその目線でこの記事を参考にしてください!
この記事は、Sランク私立の大学職員経験者が18年間の勤務経験を交えながら大学の内部事情を語っています。
まずは総務部の仕事内容から
大学職員 総務の仕事内容(肉体労働もあります)
総務部の業務範囲は広い
総務部の仕事は守備範囲が広く、一言で説明しづらく、つかみどころがない点が特徴です。
総務という言葉が示す通り「総合的な事務」を扱っているからですね。
そのため、大学によっても、同じ総務部とはいえその業務フィールドが七変化するのが通常。
とはいえ、どの大学でも共通するコアな部分の仕事内容は、
- 役員会や理事会の運営
- 学校法人としての登記や登録内容の管理
- 定款や規定や学則などの管理
といったあたりです。
大学によっては、
- 危機管理対応(コロナ対策、震災対応など)
- 法律改正などへの学内対応
- 顧問弁護士事務所との契約管理
なども行っています。
さらに、
- 秘書業務
- 広報業務
- 卒業生や寄付金受付業務
などを総務部で行っている大学もあります。
面 接 時 の ポ イ ン ト
■組織図に目を通しておく■
面接前に組織図に目を通しておくと、結構色々と役に立ちます。
総務部を軸に置いて応募先の大学の組織を眺めてたりすると、その大学の事務運営の骨組みが何となく理解できますよ。(早稲田大学の例(組織図))
この辺りを当然のように理解していたりすると、面接官の立場としては、
「あ、わかってるねぇ(さすが中途採用)」
といった心理状況になり、印象も良くなります。
大学特有の総務部の業務
中でも、大学特有の総務部の業務内容といえば、式典の主催。
入学式や卒業式などですね。
多くの大学で、入学式や卒業式は総務部が主要部署となって実施されています。
式典の運営業務
入学式や卒業式は、中堅以上の大学だと、保護者なども含めると一万人以上の来場者を迎え入れる一大イベント。
1回の式典で、予算も数千万円規模になるのが普通です。
総務部の職員は、イベント会社との細かな調整を行ったり、式典の進行シナリオを作成したり、来賓のハイヤー手配や謝礼金や控室の準備などをします。
また、遠隔会場へのライブ中継の手配などもやらなくてはなりません。
都市部の大学なら、地方会場を借り切ったり、そこに大型スクリーンを複数個手配し、リハーサルを入念に行い、そして質の高いアーカイブが残せるように打ち合わせを繰り返したりします。
式典業務の本番
式典当日の様子も紹介しておきましょう。
当日は、総務部スタッフが、
- 大会場のポイントポイントに立って来場者の誘導をしたり
- 交通機関の乱れがあればスケジュール変更に対応したり
- 体調不良者が出たら保健室に連れて行って対応したり
などなどでバタついた慌ただしい1日になります。
大学ではイベント対応の業務が多い
ちょっと話はそれますが、実は式典に限らず、また総務部に限らず、大学にはこういったイベントごとは結構あります。
例えば、
- 入試
- 学園祭
- オープンキャンパス
といったところが主なイベントのイメージ。
また、
様々な表彰式
- 著名人を招いての講演会
- 大学や学部の設立●●周年記念式典
などの運営も、100%職員が事務局です。
半年以上の準備期間を設けることも珍しくありません。
当然、イベント開催日が土日だったりすると休日勤務が発生したりもします。
面 接 時 の ポ イ ン ト
大学職員は事務作業だけではなく、上の例のように各種催し事の現場要員としても重要な役割を担っています。
現場では、緊急対応でダッシュしたり、重い荷物を運んだり、大声を出して会場誘導にあたったり、といった業務もありますので、その点を理解して面接にのぞみましょう。
猛暑、積雪、台風などと重なると、結構大変です。
面接で、
「え、デスクワークだけじゃないんですか?」
といった反応を見せてしまってはNGです。
大学職員 人事の仕事内容(民間企業と異なる点あり)
さて、次は同じく管理部門の人事部の仕事内容について見ていきましょう。
民間企業と同じような仕事内容
人事部は、大学職員業務の中でも本流の部署の一つと言えます。
やっていることや、部署としての重要度は民間企業と変わりないかもしれません。
- 職員執務評価の制度を設計したり、
- 人材育成の戦略を立案したり、
- 給与制度を整えたり、
と、「ヒト」を通して組織の骨組みを整える仕事ですね。
ですが、大学という教育・研究機関での制度設計。
そのため、大学組織のことを広く深く理解できてこそ、初めて携われる仕事と言えます。
大学特有の仕事内容
たまに聞く実例を挙げます。
民間企業で実績を残した敏腕人事マネジャーをヘッドハンティングして、私立大学の人事部長に迎え入れたというケースです。
その腕利きの人事部長は、猛烈な制度改革を推進しようとして腕を振るいます。
ですが、プロジェクトは数多く立ち上がるものの、1〜2年たっても実績が出ません。
結果、上手くいったという話も聞いたことがありません。
なぜなのでしょうか?
大学の管理部門では実績が出しづらい理由
理由の一つは、大学組織には法令遵守の意識が強烈にあるからです。
その代償として、自ずと非効率的で面倒な手続きが学内に数多く存在しています。
そのため、改革のゴールは理想的でも、それを実現させるための多くの手続きが障壁となって、一歩進むだけでもとんでもない手間と時間がかかるのです。
非効率なら、手続きをもっと簡素化させればいいのでは?
それができない事情があります。
少し長い話になりますが、大学職員を目指す上で骨格となる話なので、ここは重要ポイントです。
2つの具体的理由
合理化できない理由の一つは、過去、様々なトラブルや問題や不正などで、どこの大学も大きな傷を負いながら歴史を積み上げてきているから。
大学が一度問題を起こすと、大きく社会報道され、それによって受ける損失は計り知れません。
国からの数億円レベルの補助金減額というペナルティーを受けることもあります。
そういった問題を2度と起こさないように、数十年単位の歴史の中で学内規定などが改善され続けてきました。
その結果として、複雑で膨大な手続きが、意味のあるものとして、積み上がって出来ているのです。
二つ目の理由は、大学はまさに教育機関だから。
ある特定の敏腕職員が、思うがままに腕を振るって改革が成功すれば、それは結果として誰もが喜ぶことになるのは間違いありません。
一方、失敗してしまったらどうでしょう?
それが企業であれば、報酬を下げたり、社長が引責辞任するなりして、企業による自己責任の世界で対応すれば済む話かもしれません。
そもそも企業はスクラップアンドビルドの精神が基本、10回の失敗を重ねて1回の大成功を目指すような感じですね。
しかし、教育機関においては、そうはいきません。
失敗による損失は、学生やその保護者や卒業生もが受けることになるからです。
何千人もの学生の将来や人生に取り返しのつかない影響が出てしまう以上、大学が責任を取れば済むという問題ではないのです。
失敗は絶対に許されないのです。
大学組織が保守的で慎重なのは、こういった事情によります。
面 接 時 の ポ イ ン ト
職員の採用面接でも、面接官が見ているのは、堅実で慎重な人物かどうか、という点です。
例えば、転職という一大イベントに取り組んでいるはずの応募者。
堅実に大学職員の仕事内容を勉強して面接に臨んでいると、それ自体に適性を見出せます。
そのこと自体が、慎重で堅実なタイプであることを面接官に間接アピールできているからですね。
地味でも、話下手でも、輝かしい職歴を持っていなくても大丈夫。
情報収集さえしっかりと行っていれば、慎重で堅実な人物像が面接官に伝わり、大学職員としての適性を伝えられます。
「人件費」を預かる人事部の仕事内容
「人件費」が組織の経営を圧迫しているのはどの組織でも同じです。
大概は人件費率をどの程度におさめるかが経営上の重要課題。
かといって、給与水準などを下げれば組織の士気が下がります。
特に大物研究者など、貴重な人材がライバル大学に流れ出てしまっては、大学としての品質が下がってしまいます。
逆に人件費の水準を上げることは簡単。
ですが、少し上げただけでも、年間数億円単位の経費のカサ上げにつながったりします。
その上、一度上げてしまうと、元の水準に戻すことは一筋縄ではいきません。
そもそも、学生からの貴重な学費を人件費に注ぎ込むという発想自体が社会的バッシングの対象になります。
こういった大学経営上の重要課題をコントロールしているのも、人事部の業務のうちの一つです。
人事部は細かな仕事内容が多い
給与計算や入社・退職手続き、年金や健保の諸手続きなど、庶務・雑務も山のようにあるのが人事部の特徴です。
源泉所得税や住民税などの税務処理、年末調整に所得控除の対応など、全教職員の労務手続きを行います。
例えば、中規模大学以上なら、合計3,000人規模の教職員の処理を日常的に行う必要があります。
人事部はそれなりに事務処理量が多い部署のうちの一つと言えます。
教員採用についてのトピック
ちなみに、教員の採用については、ほとんどの大学は人事部ではなく、「学部」が独自に採用を行っています。
つまり法学部なら法学部が、理学部なら理学部が単独で選考を行っているという形です。
研究者・教育者としての採用なので、その業績判断は同じ専門分野の学部の教員しかできないからですね。
また、教員・研究者というのは、ある意味、その大学または学部の品質を示す商品。
大学としてのステイタスを将来に渡って維持するためにも、教員採用は割と聖域扱いのような位置付けです。
面接で、その大学での研究者について話題が出たときは、このあたりを認識しておきましょう。
教授の肩書きについてのトピック
よく「客員教授」や「研究特任教授」「招聘(しょうへい)教授」などと、ちょっとよくわかりづらい肩書きでテレビや著書などに出ている方がいますね。
まあ大学の教授なんだろうな、とあまり深く考えることもないと思います。
実は、これらは単に肩書きを貸してあげているだけの一般人、といったニュアンスの人たちです。
1円も給料が出ていないケースがほとんど。
色んな意味でお互いにメリットがあるので成り立っている仕組みです。
大学にとっては広報価値がありますし、本人にとってはステイタスとして利用できたりするからです。
大学における人事戦略の一つと言えますね。
とはいえ、内部関係者からすれば、この手の方々はほとんど無関係の一般人という感覚です。
こういった方々の大学に関するコメントは、関係者目線にとっては、的を得ていない薄いコメント内容になっていることがほとんど。
面接で、テレビで知っているだけの教授の名前などを出してコメントするときなどは、このあたりの状況を理解しておきましょう。
大学職員 経理の仕事内容(関心を持つと採用に有利)
経理という領域に今まで縁がなかった方は、経理なんて専門職は自分には関係ない、と思うかもしれません。
ですが、大学職員の場合は、人事異動で経理配属となるケースは普通にあります。
文学部出身だろうが外国語学部出身だろうが、辞令は組織側の論理で容赦なく発令されます。
経理の仕事内容に関心を持つことは重要
ですので、面接時などに「経理部への配属もあり得ますよ」、といった会話になったら、前向きに答えておく方が得策です。
むしろ、経理経験者でなくても経理部の仕事に興味関心を示す応募者は、面接官の立場としては好印象を受けます。
大学の資産と通帳を管理する仕事内容
大学の場合は、現金を扱う比率は少ないので、基本的には、
- 送金・入金処理
- 資産管理
- 予算編成・決算処理
などが中心になります。
そして、公認会計士や顧問税理士と、会計的な課題や問題点を日々、議論しまくります。
仮に下っ端で配属されていたとしても、打ち合わせに同席したり会議の書記をしたりで、いやでも財務的な知識が身に付いてしまいます。
それを通して、収入、支出、収益の舞台裏の全てを、否応なく正確に知ることになってしまいます。
「財務諸表」=「貸借対照表」「損益計算書」「キャッシュフロー計算書」が理解できるようになります
そのため、経理経験者は真の大学の姿を理解できているといっても過言ではありません。
例えば、
- このままだと●年後には赤字になる、とか、
- ●学部の存在が(財務的に)お荷物になっている、とか、
- ●キャンパスは郊外にあるが実は経営効果が高い、
等々を、誰からも異論を出しえない「事実として」読み取れるようになります。
それを考えると、経理部長経験者が事務総長などの大学管理部門のトップになることが多いのも何となく理解できますね。
面 接 時 の ポ イ ン ト
採用面接の際にも、
- その大学の全体の収支規模はどれくらいなのか、
- そのうち学費収入の割合はどれくらいなのか、
- 補助金はどれくらいもらっているのか、
等々のキーワードを散りばめながら面接をすると、他の応募者と大きく差がつきます。
付属病院の財務的存在感をおさえておく
ちなみに、医学部を持つ大学の場合は、付属病院が生み出す収益へのインパクトが強烈です。
その点も豆知識的に仕入れておくと、視野の広さも示せて面接では有利。
例えば慶応大学のように、大学全体の収入のうち半分以上は付属病院からの収入で占めている、といったケースも。
税務が理解できる方への豆知識
大学の収入源である学費は非課税収入。
一方で、仕入れは当然全て課税対象です。
つまり大学は、預かり消費税がないまま、支払消費税を負担していることになります。
そのため、税改正で消費税率が2%上がっただけで、大学の財政規模にもよりますが、毎年数億円単位の追加負担が生じているのが現状です。
最終消費者ではない法人がこのように多額の税負担を強いられているのは不条理だ、として、業界でも大きな問題として扱われています。
大学ならではのトピックなので、経理経験がある方などは、このあたりを知っていると大学特有の事情をよく理解しているとして好印象です。
最後に
大学職員の内定者は、仕事の実情を踏まえて軸のある志望動機を面接で伝えられています。
本気で大学職員を目指すなら、総務・人事・経理はもちろん、その他の主要な部署の仕事内容も是非おさえておきましょう。
例えば国際交流に関係する仕事内容に言及している記事はこちらです。
大学職員の仕事内容を理解するための参考にどうぞ。